最高に輝くと言う事僕は、高校時代と大学の2年間、ボクシング部に在籍していました。そんなボクシング生活の中で一番輝かしいときは高校3年の国民体育大会。 団体戦準優勝と言う成績は、実は僕自身の偉業ではなく 仲間たちが作り上げ、僕にプレゼントしてくれた感動の形だったのです。 奈良国体、2回戦、僕の相手は後にプロボクシング日本ランキング1位にまで上りつめた、愛媛代表のハードパンチャー、1ラウンド1分40秒、僕の左ストレートは空を切り、次の瞬間、テレビのコンセントが急に抜けたかのような、暗闇が襲いました。次に目をあけたとき、僕は控え室の椅子に座っていたのです。 全く記憶の飛んだ時間が不安になり、会場にふらつく足で行ってみると、 5人の対抗試合も最終試合、同じ高校の後輩が、相手をメッタ打ちにしているところでした。大きな拍手とともに、その後輩の手があげられました、3回戦進出。 自分が勝ったか負けたかもまだ理解していない僕は、あっけに取られてその場に立ちすくんでいたのです。 試合の記憶が全く無い僕は夜のミーティングに参加していました。 その場で告げられた衝撃の告知。 「KO負けした場合、選手の健康を考えて最低10日は次の試合には出場できない ルールがあるため、明日の3回戦は補欠をレギュラーに入れて戦う」 戦力外通知でした・・・・・ みんなが盛り上がって、優勝するかも知れないような場面で、僕が補欠・・・・ もう一度KOされたときと同じくらいの衝撃で目の前が真っ暗になりました。 自分に何が出来るか、何をするべきか・・どうすればチームに貢献できるのか、様々な思いが頭を駆け巡りました。 次の試合、とりあえず僕に出来る事は、のどをからして応援する事だけでした。 正直、涙が出そうなくらい孤独感を感じました、そして大声で声援を送る心中では複雑な思いが戦っていたのです。絶対負けるな、僕のチームが日本一になればこんなうれしい事は無い、いや、負けてしまえばいいここで勝てばもっと僕は惨めになる。ヒーローは補欠の選手。僕がいないから勝てたなんて思う人もいるかも知れない・・・・・・ そんな葛藤は次の日も続きました。 そう、補欠選手の意外な活躍で、チームは準決勝へとコマを進めたのです。 その夜、チームのキャプテンは僕を気遣い、ミーティングでこう言いました。 「応援の声、試合中よく聞こえたで、明日もこの応援があれば心強いわ」 もうやめてくれ、惨めになるから・・・そんな心とはうらはらに僕の口からは おどけたジョークがこぼれました「そうやな、今日は応援の力で勝てたようなもんやな、明日は今日の3倍声出すから、負けるわけないで」 みんなのさわやかな笑顔を見ながら涙が出そうになるのを必死でこらえていた僕がいました。 次の日、応援する声は枯れてほとんど聞き取れないものになってしまっていました。それでも拍手で何とかしようと大きなアクションで盛り上げました。 それしか出来る事がなかったから・・・・ 決勝進出。 僕の中で何かが吹っ切れました。心から、勝って欲しい。いや、勝つぞという気持ちが心を支配したのです。 全試合が終了した閉会式の後、地元大阪から駆けつけた応援団が準優勝を祝うパーティーを開いてくれました。 その場のクライマックスでは体重の軽い階級から一人ずつ胴上げが行なわれたのです。 僕が戦っていたライト級の番、何も迷わずに僕のところに駆け寄るチームメイトと応援団に僕は声にならないかすれた声を出しました 「僕は活躍していないから、俺より先に活躍した彼を胴上げしたってくれ、遠慮しとくわ」 そのときキャプテンはそんな僕を怒鳴りつけるかのようにこう言いました、 「お前もチームの一員やろ、一緒に戦ったやないか!何を恥ずかしがる事あるんや」 今までこらえていた涙が滝のように流れました。 胴上げを受けながら、負けたらいいなんて思った自分が恥ずかしくて、孤独を感じていた自分が情けなくて、声が出るくらい号泣しました。 それから2週間後、表彰式ということでチームのメンバーが中華料理店に呼ばれました。国体では表彰状しかもらえなかったので応援団とOBがメダルを用意してくれたと言う事でした。 一人ずつ監督の先生から首にメダルをかけて貰ったのですが、途中でキャプテンが あることに気付いたのです。 「先生、これ間違ってます、僕ら準優勝やから、銀メダルのはずやのに、これ金ですやん、」 先生は間髪入れずに答えました。 「お前たちには誰が何を言おうと金メダルをやりたい・・・それぞれがそれぞれの ポジションで最高に輝いた、優勝の金メダルを持ってる奴はたくさんいるけど、 2位の金メダルを持っているのはお前らだけや、死ぬまで忘れるな」 熱血監督の熱い語りに苦笑いしながらも、感動させられているメンバーがいました 結果より、自分のベスト、どんな状況になっても今自分に出来ることを精一杯する。 評価はひとつではない、どこで誰がどんな評価をしてくれるかなんてわからない・・・・・・ 僕の人生を変えた大きな出来事でした |